老人保健施設の主な目的は要介護者の速やかな自宅復帰にあるため、施設内でのプログラムも医療ケアやリハビリが中心です。これに伴い、常勤の医師や看護師といった医療職そしてリハビリ関連の専門職が配置され、入居期間が最長でも原則6ヶ月までの短期間であることなど、他の老人介護施設とは大きく異なる特徴があります。

とはいえ、老健も介護施設である以上、要介護者の身体介護や生活援助を行う必要があり、そこでは介護職も数多く活躍しています。その仕事内容も、他の介護施設と基本的には同じですが、老健ならではの視点や工夫を求められるシーンも少なくありません。例えば、排せつ介助もその1つ。先述したように、老健ではその目的や役割上、短期入所を前提としていることから居室についても長期入所を前提とした個室よりは、入居回転率の高い多床室が主流です。このため、介護職が排せつ介助を行う際には、同じ部屋に入居する他の利用者との物理的かつ心理的な距離について十分な配慮が求められます。

特に注意したいポイントは、プライバシーの保護です。例えば、トイレまで移動できない利用者の排せつを介助するなら、ベッド周りをカーテンやパーティションで区切って、できる限り露出を避けることが鉄則。また、排せつを終えたら、排せつ物や器具類を速やかに片付け、同時に換気もしなければならなりません。ニオイの拡散を防ぐためにも、消臭剤や脱臭剤等を適宜活用するのも良いでしょう。仮に利用者が失禁してしまっても、本人の人格を傷つけるような言動や表情あるいは態度をしてはなりません。あくまでも個人の尊厳を守ることが介護での原則。ましてや複数の入居者がいる多床室であれば、なおさら注意が必要です。